相続・遺言関係

遺産分割・特別受益

Q.先日父が亡くなりました。母は数年前に他界して、相続人はわたし(兄)と妹の二人です。父の財産は、わたしと父が住んでいた自宅の土地建物(評価2600万円)と預金が1000万円の合計3600万円ほどです。

49日の法要をすませた頃、妹が遺産分けの話を持ちかけてきました。妹は、「父の財産の2分の1を受取る権利がある。自宅の共有持分をもらっても仕方ないし、この際、自宅を売って半分ずつ分けるしかない」と言うのです。

わたしは納得がいきません。自宅を売るとなれば、わたしの家族は家を出なければなりません。妹は8年前に家を新築する際、父が頭金の1200万円をお祝いとして渡したと聞いており、妹へ振り込んだ預金通帳も見ています。この1200万円は、今回の遺産分けの際に考慮されないのでしょうか?また、わたしは、自宅を出るしか方法はないのでしょうか?因みにわたしは、生前に父から贈与などを受けたことはなく、むしろ父のために妻はパートを辞めて介護をしていました。妹は、月に一度、父の顔を見に来る程度で、何の手伝いもしなかったのに、権利ばかりを主張してくるのです。

回答

まず、生前贈与については、妹さんが受けた贈与は特別受益となり、被相続人の財産の価額に加えられます。(民法903条)被相続人(父)の相続財産は、自宅と預金を合わせた3600万円と生前に妹さんに贈与した現金1200万円を合わせた合計4800万円が基準となり、その2分の1ずつを相続することになりますので、妹さんは今回相続分の2400万円から生前贈与の1200万円を差し引いた1200万円分の財産を受取る権利があるということになります。

また、財産分けの中で妹さんが預金を全額もらったとしても、200万円の不足が出ます。

この200万円分の調整の方法として、必ずしも自宅を売却して現金を渡す必要はなく、兄がもっている資産(不動産や有価証券または現金など)から妹に支払う方法があり、この手法を代償分割といいます。

不動産を売却といっても、すぐに買い手が見つかるかどうかも分かりませんし、なにより兄の生活の本拠となっている自宅であれば、妹さんと話し合って、200万円を月々分割で支払うといった内容の遺産分割協議書を作成するという方がよいのではないでしょうか?

万一、妹さんがこの提案に納得しない場合は、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てて、話し合いをまとめてもらうことも出来ます。それでも話がまとまらない場合は、裁判ということになりますが、長期にわたり財産が凍結される可能性もあります。