円満な手続き事例

遺言・家族信託

会社経営者のXさん(76歳)は、若い時から苦労をして、今の運送会社を大きくしてきました。経営も安定して、そろそろ社長を長男Tさんに譲り、会長職に退こうかとも考えています。Xさんは現在会社の株式の全部を所有しています。

Xさんの家族は、20年前に死別した妻との間に、長男Tさんと長女のOさんの二人と、その後再婚した妻Yさん(60歳)がいます。

Xさんの財産

①会社の株式10000株

②自宅の土地建物

③現金3,000万円

Xさんの家族関係

Xさんの希望

会社は、長男Tに継がせ、その後も長男の子M(孫)に継がせたい。

相続の際は、長男Tには一部の現金を、長女には住宅を購入する際に相当の資金を贈与しているので、相続はなし。長女も承諾済み。

私が亡くなった後、妻の住居のことや生活費のことが心配なので、自宅、現金を相続させたい。会社の株式は、配当金があるので、妻の生活資金としたいが、妻は会社の経営のことは分からないことと、妻が亡くなった後の株式は、妻方の兄弟が相続することになると不都合が生じることになる。これは自宅についても同じ問題が残る。

できれば、妻が亡くなった後の株式と自宅は、長男Tそして孫Mへ引継ぎたい。

解決策

1.家族信託の設定

Xさんの財産のうち、①株式820株②自宅の土地建物について、委託者X、受託者T法人(Tを代表者とする一般社団法人を設立)、受益者Xとする信託契約を結ぶ。その中で、Xの死亡により、第二次受益者として妻Yを指定する。但し、株式の受益権については、収益受益権を妻Y、議決指図権付の元本受益権を後継者の長男Tに取得させることとする。また、妻が亡くなった場合の第三次受益者は、長男T、第四次受益者は、孫Mと指定した。

2.公正証書遺言の作成

信託財産以外の財産の分配については、公正証書遺言を作成した。遺留分に配慮して妻1,000万円、長男2,000万円、長女には生前に贈与しているので、相続はないということも忘れずに書添えた。

効果

家族信託の設定によって、株式は、Xさんが元気なうちは、議決指図権を持ち、会社の経営を見守ることができ、配当もこれまでどおり受け取る。亡くなった後は、妻Yには配当を、長男Tには会社の議決指図権を持たせることで、社長として会社経営の安定を図ることが出来ます。また、妻の死亡後の受益者を孫Mまで指定することで2代先までの会社後継者を、Xさんが決めることができるのです。

自宅の土地建物については、Xさんの死亡後も、妻が安心して住み続けることが出来、妻が亡くなれば、妻の相続人ではない、長男Tへの引き継ぎも、信託契約で決めておくことが出来ます。