ブログ「ひと葉日記」

自筆証書遺言保管制度とは

こんにちは。司法書士法人ハート・トラスト福岡オフィス 重村です。

初めて投稿させていただきます。皆様に有益な情報をお届けできればと考えていますので、今後とも宜しくお願いいたします。

令和4年が始まり、はや4週間目となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
福岡はいきなりコロナ感染者が大変なことになって、先日は過去最多感染者数を記録したみたいですね。
私は地下鉄通勤なので、なるべく人込みを避けるよう日々連結器の上に立って電車に揺られる毎日です。

さて、今回は「自筆証書遺言保管制度」についてお話いたします。

一昨年から始まった制度ですが、とても有用なものですので、そのメリット、デメリットなどお知らせできればと思います。

自筆証書遺言保管制度

これまで遺言の方式には、公正証書による遺言書、自筆による遺言書の2パターンしかありませんでしたが(実際にはこれとは別に秘密証書遺言がありますが、実用性に乏しいため今回は割愛させていただきます。)、令和2年7月10日から新しい遺言書の方式として全国の法務局にて「自筆証書遺言保管制度」が開始されています。

不動産の相続登記において、遺言書があり、受取人がその遺言者の相続人であれば、遺産分割協議等を行わずに、単独で不動産の名義を取得することができます。

遺言書がない場合は、法定相続による相続登記、または遺産分割協議による相続登記により不動産の名義を変更しますが、遺言がある場合に比べ、必要な戸籍の量が多く、遺産分割にいたっては相続人全員の印鑑証明書が必要なため、それにかかる手間と時間が大きく異なります。

では、新しく始まった「自筆証書遺言保管制度」ですが、これまでの遺言と何が違うのでしょうか。

公正証書遺言と自筆証書遺言

公正証書遺言は、公証役場にて公証人が作成する遺言書になります。

作成日当日に公証役場に、遺言者の他証人として2人に同行してもらうことになり、事前に公証人に示した遺言書の内容を公証人に口授し、間違いなければ公証人によって作成されます。

メリットは、遺言の高い有効性、遺言者への公証人の出張制度、遺言者が自筆しなくていい点等があります。

自筆証書遺言は、遺言者自身が自筆にて作成した遺言書になります。

メリットは、遺言者自身が遺言のすべてを手書きで書くものですので、どこかに出向いたり、費用がかかったりといったことがありません。

そして、この2つの遺言の一番大きな違いは、「家庭裁判所の検認」の必要性の有無になります。

自筆証書遺言は、民法における遺言の要件に合致していれば、有効に遺言書として成り立つため、一番簡単な方法ですが、実際に相続登記を申請する際や、預貯金等の相続手続きをする際には「家庭裁判所の検認」を付与されないまま行っても、受理されません。

また、この「家庭裁判所の検認」は1日2日でできるものではなく、提出書類の作成、申し立て、検認期日の確定まで数カ月かかることになり、その際家庭裁判所から、相続人全員に連絡がいくため、トラブルの原因になることも多くあります。

それに対して公正証書遺言は、作成に費用と時間はかかりますが、相続登記、預貯金等の相続手続きの際に、「家庭裁判所の検認」が不要です。

自筆証書遺言保管制度のメリット

自筆証書遺言保管制度は、読んで字のごとく、自筆証書遺言を法務局が保管してくれる制度です。

運用としては、遺言者自らが管轄法務局へ予約(インターネット、電話、窓口)を取り、予約日当日に、自筆証書遺言、本籍入住民票、身分証明書、遺言保管申請書、印紙(3900円分)を持参して申請し、受け付けられると「保管証」が発行されます。

遺言者の死亡時には相続人は法務局から「遺言書情報証明書」を発行してもらい、それをもって相続手続きをすることになりますが、この「遺言書情報証明書」は「家庭裁判所の検認」不要で相続登記や預貯金の相続手続きを進めることができます。

自筆証書遺言保管制度は、自筆証書遺言の手軽さと、公正証書遺言の「家庭裁判所の検認不要」「保管」というメリットを併せ持っており、また、自筆証書遺言の法律上の形式的要件のチェックもしてくれますので、後から形式的に無効となることはありません。

そして、公正証書遺言と異なり、遺言者の死亡時に法務局から死亡時通知人へ通知がされるので、遺言書の存在確認がされやすいというメリットもあります。

自筆証書遺言保管制度のデメリット

字を書くことが困難な場合、法務局へ出向くのが大変な場合等、遺言者自身が1人で行うことが難しい場合には向いていない制度かもしれません。

有用性が高い自筆証書遺言保管制度ですが、遺言者の体調、実情によってはサービス性が高い公正証書遺言を利用すべき場面が多くあるといえます。


いずれにしても、遺言は残されたご遺族の負担にならずに、スムーズに相続を遂行するための重要なアイテムですので、ご活用されることをお勧めします。